こんにちは、公認会計士の岡﨑です。
今回は社会福祉法人において開示される計算書類のうち資金収支計算書について解説をします。
社会福祉法人においては営利法人の採用する企業会計基準と名称が異なってはいますがおおよその内容は同じものとなっております
- 貸借対照表 :一定時点における財政状態を表す計算書。これは営利法人と同じです
- 事業活動計算書 :一定期間における経営成績を表示する計算書。これは営利法人において損益計算書とほぼ同じ内容になります
- 資金収支計算書 :一定期間における支払資金の流入と支出を表示する計算書。これは営利法人においてキャッシュ・フロー計算書とほぼ同じ内容になります。
その他計算書類においては「財産目録」という資産および負債についての明細を開示することになります。
今回は③資金収支計算書について説明をしていきます。
資金収支計算書とは
社会福祉法人会計基準では資金収支計算書について
「資金収支計算書は、当該会計年度における全ての支払資金の増加及び減少の状況を明瞭に表示するものでなければならない。」
と定義しています。
資金収支計算書は当該会計年度の「決算」の額を「予算」の額と対比して記載します。
この場合「予算」欄に記入する額は当初予算額ではなく、最終補正予算額になります。なお、差異は「予算-決算」によって算出されます。
資金収支計算書の区分としてはまず「事業活動による収支」があり次に「施設整備等による収支」、その次に「その他の活動による収支」があります。
それぞれ各段階での収支差額を計算しこれに前期末支払資金残高を加えることで当期末支払資金残高を計算します。
資金収支計算書は社会福祉法人会計に初めて触れる際に最も一般会計との乖離を感じるところかもしれません。
資金収支計算書においては資金の増加を収入、資金の減少を支払として表されます。
社会福祉法人会計では、資金収支計算書を作成するために通常の会計帳簿を作成しながら資金帳簿を作成することになります。
ただ、一般的な経理ソフトにおいては、この資金帳簿については自動で作成されますのでいちいち仕訳を起こす必要はないのですが、資金取引と非資金取引について細かな修正は必要になることもありますので、何が資金取引で何が非資金取引なのかについてはしっかりと認識しておく必要があります。
資金収支仕訳は以下のようなイメージになります
<収入仕訳>
(借方) 支払資金 ×× (貸方) ○○収入 ××
<支出仕訳>
(借方) ○○支出 ×× (貸方) 支払資金 ××
上記のように、収入が起こった時には支払資金の増加、支出が起こった時には支払資金の減少を認識することになります。
資金収支計算書における支払資金の範囲
次に資金収支計算書における支払資金の範囲を見ていきます。
資金収支計算書の支払資金とは、経常的な支払準備のために保有する現金及び預貯金、短期間で回収されて現金化される未収金、立替金、有価証券等、仮払金等、短期間で決済される未払金、預り金、短期間のうちに事業活動収入として処理される前受金等の流動負債等をいいます。
ただしここで棚卸資産や引当金等、また1年基準により固定資産や固定負債から振り替えられた流動資産や流動負債は除かれることになります。
つまり支払資金の残高はこれらの流動資産と流動負債の差額ということになります。
おわりに
今回はざっくりと大枠を記載してみましたが具体例や誤りやすい取引についても多くあります。
特に設立直後の社会福祉法人においては各勘定科目の設定や予算の取り方などなじみのない資金収支周りで取り扱いについては難しい点が多いと思います。そのような場合はぜひ税理士法人YFPクレアまでお問い合わせください。
次回は資金収支計算書の取引について具体例を挙げて記載していこうと思います。
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