この記事は2022年6月に書かれたものです。

みなさまこんにちは。税理士法人YFPクレアの中村です。
梅雨の時期に突入し、じめじめとした日々が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか?

今回は消費税の納付税額計算に係る二つの計算方法「本則課税」、「簡易課税」についてお話しさせていただきます。

消費税納付税額の計算方法

消費税の納付税額計算にには「本則課税」と「簡易課税」の2種類があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

本則課税

いわゆる「本則課税」とは納付税額の原則的な計算方法になります。

売上に対して課され売上と共に預かっている消費税・・・仮受消費税
仕入、経費、資産の購入などの支払に課され支払っている消費税・・・仮払消費税

本則課税ではこの「仮受消費税」と「仮払消費税」との差額から納付税額を計算します。

例)売上 2,000万円               仮受消費税200万円
  仕入 1,000万円               仮払消費税100万円
  仮受消費税200万円-仮払消費税100万円=納付税額100万円

また、何か大きな資産(建物など)の購入があった場合には仮受消費税よりも仮払消費税の方が大きくなることもあり、本則課税ではこのような場合に消費税の還付を受けることができます。

例)売上 2,000万円               仮受消費税200万円
  仕入 1,000万円               仮払消費税100万円
  建物 3,000万円              仮払消費税300万円
  仮受消費税200万円-仮払消費税400万円=還付税額200万円

簡易課税

次は「簡易課税」の計算方法について解説していきます。

簡易課税は課税事業者のうち基準期間(納税義務判定と同様2年前の期間)の課税売上高が5,000万円以下の場合にのみ選択適用ができる納付税額の計算方法です。(ただし事前の届出書の提出が必要)

本則課税では売上に係る消費税と仕入、経費などに係る消費税との差額から計算しているのに対して、簡易課税では売上に係る消費税だけで計算するという点に違いがあります。

売上に係る消費税に一定のみなし仕入率を乗じて計算した金額を仕入に係る消費税とみなして納付税額を計算することとなります。

 例)売上2,000万円              仮受消費税200万円
   仮受消費税200万円-仮受消費税200万円×みなし仕入率50%
   =納付税額100万円

みなし仕入率は以下の簡易課税の規定における6種類の事業ごとに定められます。

第一種事業・・・卸売業                                             90%
第二種事業・・・小売業                                             80%
第三種事業・・・製造業                                             70%
第四種事業・・・飲食業、その他の事業など          60%
第五種事業・・・サービス業など                           50%
第六種事業・・・不動産事業                                     40%

印税・原稿料といった売上は第五種事業に該当しみなし仕入率は50%です
自費出版した場合における売上は第三種事業に該当しみなし仕入率は70%です

簡易課税では実際に支払った消費税については計算上完全に無視されてしまうため、建物など大きな資産を購入し支払った消費税が多額となった場合であっても本則課税のように消費税の還付を受けることができませんので注意が必要となります。

漫画家のみなさまに関わりのありそうなもの

まず消費税の納税義務が生じた場合に「本則課税」と「簡易課税」のどちらを選択したら良いのかという疑問を持つかと思われます。
厳密にはケースバイケースでシミュレーションをしてみないと確実ではありませんが、印税に係るみなし仕入率50%を一つの目安とすると以下のように判断が可能です。

  1. アシスタント、外注等の支払が多い方
    売上に対して経費等の支払が50%以上になる場合には「本則課税」が有利になる可能性が高いです。
    ただし、アシスタント料を時間給や月給などの給与として支払っている場合や、自宅の家賃を経費として計上している場合にはこれらの支払には消費税が含まれませんので、これらを除いたうえで50%以上の支払があるか判断が必要です。
  2. 一人でお仕事されている方
    売上に対して経費等の支払の割合が低い傾向が多く(10%、20%程度など)
    「簡易課税」のみなし仕入率50%の方が有利になる可能性が高いです。
    ただし、例えば事務所用の建物を建築するなど特別大きな買い物がある年については「本則課税」が有利になる場合もございますので我々税理士事務所へ事前に相談していただければ幸いです。

消費税の計算方法 まとめ

 「本則課税」
  売上に係る消費税                                          仮受消費税
  仕入、経費、資産の購入に係る消費税          仮払消費税
  納付税額                                                         仮受消費税-仮払消費税

 「簡易課税」
  売上に係る消費税                                         仮受消費税
  みなし仕入率(印税・原稿料)                    50%
  納付税額                                                        仮受消費税-仮受消費税×50%

おわりに

今回は消費税の納付税額に関して実際にどのようにして計算が行われるのか具体的な金額も使って解説させていただきました。
特にこの二つの計算方法の選択については適用を受けようとする年の前年12月31日までに届出書の提出の有無を決めないといけません。
なかなかご自身での判断が難しい場合もございますので、そのような場合には是非税理士法人YFPクレアへ一度ご相談ください。

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