この記事は2026年6月に修正したものです。
みなさまこんにちは。税理士法人YFPクレアの中村です。
梅雨の時期に突入し、じめじめとした日々が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか?
今回は消費税の納付税額計算に係る二つの計算方法「本則課税」、「簡易課税」についてお話しさせていただきます。さらに、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった方については、一定期間、「2割特例」または「3割特例」を利用できる場合があります。
まずは、基本となる本則課税と簡易課税から詳しく見ていきましょう。
消費税納付税額の計算方法
消費税の納付税額計算にには「本則課税」と「簡易課税」の2種類があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
本則課税
いわゆる「本則課税」とは納付税額の原則的な計算方法になります。
売上に対して課され売上と共に預かっている消費税・・・仮受消費税
仕入、経費、資産の購入などの支払に課され支払っている消費税・・・仮払消費税
本則課税ではこの「仮受消費税」と「仮払消費税」との差額から納付税額を計算します。
例)売上 2,000万円 仮受消費税200万円
仕入 1,000万円 仮払消費税100万円
仮受消費税200万円-仮払消費税100万円=納付税額100万円
また、何か大きな資産(建物など)の購入があった場合には仮受消費税よりも仮払消費税の方が大きくなることもあり、本則課税ではこのような場合に消費税の還付を受けることができます。
例)売上 2,000万円 仮受消費税200万円
仕入 1,000万円 仮払消費税100万円
建物 3,000万円 仮払消費税300万円
仮受消費税200万円-仮払消費税400万円=還付税額200万円
なお、現在の本則課税では、仕入れや経費に係る消費税を差し引くために、原則として帳簿とインボイスの保存が必要です。
相手がインボイス発行事業者でない場合は、支払った消費税の全額を差し引けないことがあります。ただし、一定期間は、インボイスがない取引についても一定割合を控除できる経過措置があります。
一方、簡易課税、2割特例または3割特例を利用する場合は、納付税額の計算上、仕入れや経費の消費税を1件ずつ集計する必要はありません。
簡易課税
次は「簡易課税」の計算方法について解説していきます。
簡易課税は課税事業者のうち基準期間(納税義務判定と同様2年前の期間)の課税売上高が5,000万円以下の場合にのみ選択適用ができる納付税額の計算方法です。(ただし事前の届出書の提出が必要)
本則課税では売上に係る消費税と仕入、経費などに係る消費税との差額から計算しているのに対して、簡易課税では売上に係る消費税だけで計算するという点に違いがあります。
売上に係る消費税に一定のみなし仕入率を乗じて計算した金額を仕入に係る消費税とみなして納付税額を計算することとなります。
例)売上2,000万円 仮受消費税200万円
仮受消費税200万円-仮受消費税200万円×みなし仕入率50%
=納付税額100万円
みなし仕入率は以下の簡易課税の規定における6種類の事業ごとに定められます。
第一種事業・・・卸売業 90%
第二種事業・・・小売業 80%
第三種事業・・・製造業 70%
第四種事業・・・飲食業、その他の事業など 60%
第五種事業・・・サービス業など 50%
第六種事業・・・不動産事業 40%
印税・原稿料といった売上は第五種事業に該当しみなし仕入率は50%です
自費出版した場合における売上は第三種事業に該当しみなし仕入率は70%です
簡易課税では実際に支払った消費税については計算上完全に無視されてしまうため、建物など大きな資産を購入し支払った消費税が多額となった場合であっても本則課税のように消費税の還付を受けることができませんので注意が必要となります。
インボイス登録をした方の「2割特例」(2026年度分まで)
インボイス制度をきっかけに、それまで免税事業者だった方が課税事業者になった場合は、「2割特例」を利用できることがあります。
2割特例を利用すると、納付する消費税額を、売上に係る消費税額の2割として計算できます。
例えば、売上に係る消費税が100万円の場合は、次のようになります。
100万円×20%=納付税額20万円
実際に支払った経費の消費税を集計する必要はなく、簡易課税制度選択届出書の事前提出も必要ありません。消費税の申告書で2割特例を利用する旨を記載して適用します。
個人事業者の場合、2割特例を利用できるのは令和8年分の消費税申告までです。
ただし、2年前の課税売上高が1,000万円を超える場合など、インボイス登録をしていなくても課税事業者となる年については、2割特例を利用できません。
令和9年分・令和10年分は「3割特例」
2割特例は令和8年(2026年度)分で終了しますが、令和8年度税制改正により、一定の個人事業者については、令和9年分と令和10年分に「3割特例」を利用できることになりました。
3割特例では、納付する消費税額を、売上に係る消費税額の3割として計算します。
例えば、売上に係る消費税が100万円の場合は、次のとおりです。
100万円×30%=納付税額30万円
3割特例も、実際に支払った経費の消費税を集計する必要はなく、事前の届出も原則として必要ありません。
対象になるのは、インボイス登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった個人事業者です。法人は3割特例を利用できません。
また、2年前の課税売上高が1,000万円を超える場合など、インボイス制度とは関係なく課税事業者になる年は対象外です。
漫画家のみなさまに関わりのありそうなもの
まず消費税の納税義務が生じた場合に「本則課税」と「簡易課税」のどちらを選択したら良いのかという疑問を持つかと思われます。
厳密にはケースバイケースでシミュレーションをしてみないと確実ではありませんが、印税に係るみなし仕入率50%を一つの目安とすると以下のように判断が可能です。
- アシスタント、外注等の支払が多い方
売上に対して経費等の支払が50%以上になる場合には「本則課税」が有利になる可能性が高いです。
ただし、アシスタント料を時間給や月給などの給与として支払っている場合や、自宅の家賃を経費として計上している場合にはこれらの支払には消費税が含まれませんので、これらを除いたうえで50%以上の支払があるか判断が必要です。 - 一人でお仕事されている方
売上に対して経費等の支払の割合が低い傾向が多く(10%、20%程度など)
「簡易課税」のみなし仕入率50%の方が有利になる可能性が高いです。
ただし、例えば事務所用の建物を建築するなど特別大きな買い物がある年については「本則課税」が有利になる場合もございますので我々税理士事務所へ事前に相談していただければ幸いです。 - インボイス登録をきっかけに課税事業者になった方
インボイス登録をしたことで、初めて消費税の申告が必要になった方は、本則課税と簡易課税だけでなく、2割特例(3割特例)も検討しましょう。
印税・原稿料が中心の漫画家の場合、簡易課税ではみなし仕入率が50%となるため、納付税額は売上に係る消費税額のおおむね50%です。
これに対して、
・2割特例は、売上に係る消費税額の20%
・3割特例は、売上に係る消費税額の30%
を納付する計算です。
そのため、2割特例や3割特例を利用できる場合は、簡易課税より納付税額が少なくなることが多いでしょう。ただし、高額なパソコン、液晶タブレット、事務所、印刷設備などを購入した年は、本則課税の方が有利になる可能性があります。
また、自費出版やグッズ販売など、印税・原稿料以外の売上がある場合は、簡易課税における事業区分が複数になることがあります。
「2割特例が使えるから、そのまま適用すればよい」とは限りません。大きな買い物や複数の売上がある場合は、申告前ではなく、購入や届出をする前に税理士へ相談することをおすすめします。
消費税の計算方法 まとめ
「本則課税」
売上に係る消費税 仮受消費税
仕入、経費、資産の購入に係る消費税 仮払消費税
納付税額 仮受消費税-仮払消費税
「簡易課税」
売上に係る消費税 仮受消費税
みなし仕入率(印税・原稿料) 50%
納付税額 仮受消費税-仮受消費税×50%
「2割特例」
売上に係る消費税 仮受消費税
納付税額 仮受消費税×20%
個人事業者の場合、令和8年分まで利用できます。
「3割特例」
売上に係る消費税 仮受消費税
納付税額 仮受消費税×30%
一定の個人事業者が、令和9年分・令和10年分に利用できます。
おわりに
今回は消費税の納付税額に関して実際にどのようにして計算が行われるのか具体的な金額も使って解説させていただきました。
特に、本則課税と簡易課税の選択については、原則として、簡易課税の適用を受けようとする年の前年12月31日までに届出書を提出する必要があります。
一方、2割特例や3割特例は、原則として事前の届出は必要なく、消費税の申告時に適用するかどうかを判断できます。
また、2割特例または3割特例を利用した後、簡易課税へ移行する場合には、届出期限について特例が設けられています。
消費税は、届出の有無や提出時期によって選べる計算方法が変わります。特に、高額な設備を購入する予定がある方、自費出版やグッズ販売など複数の売上がある方は、購入や届出をする前に税理士へご相談ください。
なかなかご自身での判断が難しい場合もございますので、そのような場合には是非税理士法人YFPクレアへ一度ご相談ください。
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