こんにちは、YFPクレア 芸能関係チームです。
今回は、芸能人の経費についてお話しいたします。

一口に「芸能」と言ってもそこはいろんなフィールドがあります。
俳優、女優、歌手、お笑い、伝統芸能、Youtuber、などなど…挙げたらキリがありません。
見方によっては、アナウンサーやスポーツ選手なども芸能人として考えられるかもしれません。
みなさんそれぞれ、ご自身が一番輝けるフィールドで活躍されています。

当然ながら、人間がお仕事をすればお金の出入りが発生するわけで、芸能人もしかり。
それに伴い会計処理や決算、税務申告がつきまとうわけです。

1人の芸能人が1決算・申告しているとして(勝手な妄想です)、その内容は千差万別。
活躍のフィールドにより必要経費の内容が全く異なってくることを考えると、「あの俳優さんの帳簿にはどんな経費が計上されているんだろう!」と、一人でドキドキワクワクしてしまいます(これはほとんど病気です、すみません)。

それぞれのフィールドに合った適格な会計処理と決算を行い、適正な納税額を算出するため、私たち芸能チームでは、クライアント様とのインタビューを必ずさせていただいています。
どのような活躍をされているのか、出演している映画や舞台、テレビ番組、動画の配信内容により経費の内容も異なってくるとわかっているからです。
特に、芸能関係特有の衣装や美容関係などについては、どのような目的で必要だったのかなども確認させていただいています。
インタビューを行ったうえで、YFPクレアルールの経費按分比率にのっとって経費計上をしています。

今回のコラムでは、基本的な経費計上の考え方から税務調査の実例、税制改正についてもまとめました。
適格な決算のためにも、ぜひ目を通してみてください!

経費計上の基本から

まずは「経費」がどんなものか、その判断の基本的な考え方から解説します。

経費計上の判断基準の根底の考え方として、法人、個人などの区分にかかわらず、経費に計上できるかどうかの判断基準は一緒です。
法人だから経費にできない、個人だから経費にできるという区別(差別)はありません。

ということは、「えーそんなお得なことできるのー!うふっ?」的なうまい話は税務では「ない!」ということです。
そこのところはぜひ、押さえておいてください!

私物としても使えるものの経費の按分率の判断基準

仮に、10万円超の高級バッグを経費にしました…と報告を頂いたら…

① 事業に使うものなのかの確認
② 事業で使用する(した)頻度 
③ 資産計上対象となることの説明 
④ 廃棄の場合は廃棄業者からの廃棄証明書の取り寄せ

など確認作業を行ったうえで、経費に上げられるか、事業使用と個人使用はどのくらいの按分率で計上できるか判断をします。

経費計上への判断基準や個人使用する場合の経費按分比率などは税理士により様々ですので、税理士に会計処理や申告をお願いする場合は、経費計上への考え方や判断基準、家事按分比率などの確認は必要です。

税理士法人YFPクレアの事業按分比率

税理士法人YFPクレアでは、経費と事業の按分比率を「50%」「70%」「100%」の3つに分けています。
按分比率は、会計処理の際、お客様に個別にインタビューしながら判断しています。

YFPクレアの按分比率の考え方

 100%経費計上 ⇒ 全て事業(芸能活動)で使用したもの
 70%経費計上  ⇒ 多くを事業で使用したもの(一部個人でも使用)
 50%経費計上  ⇒ 多くを個人で使用したもの(一部事業でも使用)

忙しい皆様には多少なりともお時間をいただくことになりますが、活躍のフィールドにより必要経費が異なることをわかっているからこそ、寄り添った決算書を作成するためには、インタビューが必要不可欠となるのです。(数年前の小林幸子さんのNHK紅白歌合戦衣装などは、100%芸能活動の衣装なのでわかりやすいのですが……。ん?あれは衣装というか機械装置かも?)

全て100%経費計上しちゃいたい! イケイケドンドン計上しちゃいたい!

……のはやまやまですが、税理士法人YFPクレアは「適正な税額を計算する」「脱税はしない!」と社員一同業務に取り組んでおりますので、その心意気に免じてご理解ご協力いただければと思います。
個人の芸能人だけではなく、芸能プロダクションのような法人に関しても同様のスタンスで対応させていただいています。

税理士によっていろんな考え方や按分比率はあるにせよ、
「1度でも仕事で使ったら全部100%経費計上OKよ~」
なんていう能天気な税理士はいないと思います(少なくとも筆者の周りにはいません)。誤解のないようお気を付けください。

中には。。。
「自分で確定申告するからうるさいこと言われないもんね~」
と思われる方もいると思いますが、ちょっと待って!
国税庁は小規模事業主の所得を掌握したいと、徐々に準備を進めているんです。
このあと紹介する税制改正の内容も確認して、正しい申告をしましょう!

ユーチューバーの経費がズルい!?

先日、同僚が
「Youtuberの経費がズルいって話題になってたんだけど……。」
と言い出しまして、どういうことか詳しく聞いてみました。
曰く、
「『Youtuberはルームツアーしたら部屋のもの全部経費にできる』って書かれている出版物が話題みたいでさ、やばくない?」
とのことで、その印刷物を拝見しましたら
【ラグジュアリーブランドの超高額バッグ(1つ10万円超)を、1度だけでもYoutubeで紹介したら全額経費に落とせる】
といった内容のもの。

≪それはやばい!いくらなんでもその経費判断は乱暴すぎる!!≫

ということで、ユーチューバーの税務調査事例をお話します。

ユーチューバーの税務調査事例

実際に、ユーチューバーの方が税務調査で、重加算税を含めて約700万円を追徴課税された例があります。

税務調査事例

2023年3月11日のこと。

とある男性が、動画をYou Tubeに投稿し、その報酬として約3600万円を得ていたのにも関わらず、確定申告をしていなかった。

国税局から税務調査を受けた結果、重加算税を含む約700万円の追徴課税……ということです。

これで驚いたのは、「無申告」で「重加算税」までいったことです。

無申告だった場合、多くは「無申告加算税15%」を課せられます。
これは通常の申告漏れ(過少申告加算税10%)より少し重いペナルティといえるでしょう。

しかし、重加算税というのは45%。超重いペナルティです。
無申告という理由だけでは、重加算税にすることは出来ません。
「申告の必要を認識していながら、仮装・隠蔽行為があった場合」に課せられるものです。

もちろん、この証明はかなり難しいものです。
税務調査官は「納税者が申告の必要性を認識していながら、意図的に申告しなかった」という納税者の心の内を証明しなければいけませんからね。

最初、男性は「You Tubeの収益は申告しないといけないなんて知らなかった」と言っていたそうですが、今回の国税局は甘くない。
男性のパソコンを押収し、「税務調査を受けた場合はどう対応するか」という内容の動画を見ていたこと、確定申告を促すメールを開封していたことなどから、「知っていたのにも関わらず、意図的に無申告だった」と結論付けました。男性からすればバレてしまったというかたちでしょうか。

なんというか、国税局の意気込みの凄さを感じましたよ。
ユーチューバーに対して、無申告者に対しての本気度の高さを感じますねぇ…

今回の事例は無申告についてでしたが、当然「これも経費!あれも経費!」も大変危険です。
確定申告の必要性と適格な経費計上の重要さはご理解頂けたでしょうか。

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次は確定申告にまつわる、税制改正のお話です。

税制改正!個人所得もしっかり見られる時代になる

令和4年税制改正の項目の中に「納税環境整備」についての改正があります。
今回の改正で一番重要な改正です!と、先日受講した研修で先生がおっしゃっていました。

納税環境整備とは、公平公正な納税を行うための環境を整えるための制度です。
令和4年の大きな目玉は「電子帳簿保存法」ですが、検討課題として「小規模事業主の所得の掌握」という課題があるようです。

昨今、デジタル配信事業が盛んになり、本業副業問わず、多くの個人が気軽に収入を得られるようになりました。
収入を得たら稼いだ分申告納税がついてきますが、小規模事業者の場合、帳簿がきちんとされていない、そもそも申告をしていないなどバラバラで適正な納税がされているか把握が遅れている状況のようです。
その掌握のため、国税庁が個人事業主の納税環境を整備しようと本気で乗り出しつつあります

ということは。。。
近い将来には個人事業主にもガンガン税務調査に入るぜ!
と鼻息荒くしている国税庁が目に浮かびます ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル。

調査が入ったら、調査官に説明するための客観的な書類やデータが必須となります。
そのため、データや帳簿の整備のための法改正が徐々に始まっているのです。

例えば、先ほど例に出した「高額バッグ」の場合……

パターン1

1回しか事業で使用しない高額バッグを100%経費計上したことについて税務調査で質問される
→「1回だけYoutubeで配信して後は自分で使っています」と言う
→「100%経費計上は無理です」と言われる

パターン2

1回しか事業で使用しない高額バッグを100%経費計上したことについて税務調査で質問される
→「すぐに捨てました」と言う
→「廃棄処分証明書も見せてください」と言われる

と、こうなる可能性があるわけです。
そして、税務調査で証明書等を見せてと言われたら、すぐに提示しなければなりません。

データ保存はきちんとされていますか?
すぐに検索できるように保存されていますか?
そもそも、その経費計上判断は大丈夫ですか?


税務調査では突飛なことは聞かれません。
あくまでも【常識的な商取引の流れを書面やデータで説明できるかどうか】にかかってきます。
「あの本に経費にできるって書いてあったんですけど~」という説明は通用しません。
必要書類を提示できない場合、場合によっては経費計上を否認され、その分の所得税や延滞税、場合によっては加算税を納税しなければなりません。

延滞税や加算税を納税するのはどう考えてもマイナスです。
本来払わなくてよかった税を納めることになるくらいなら、初めから正しく納税しておく方が最終的な支出も少なく済みます。

おわりに

様々な経費計上にまつわるお話をしてきましたが、結局は「適格な会計処理と決算を行い、適正な納税額を算出して納税しましょう」ということに尽きます。
グレーな判断や雑なデータ保存のせいで税務調査の際に困るなんて事が無いようにしましょう!

しっかりとアンテナ張って情報収集している小規模事業主さんからは、「どのように資料を整備しておいたらいいでしょうか?」と質問をいただき始めています。
近い将来のことを先読みして今から備える、という心持ちも大切です。
せっかくデジタル社会が発達していろいろな情報が日々提供されているのですから、『事業主としてのご自分』を守る情報の収集もぜひお願いいたします。

もし、ご自身での判断等が難しいといったことがあれば、ご遠慮なく弊社や最寄りの税理士さんにお問い合わせしてみてください。
お待ちしています。

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四谷監査2部2課 漫画・芸能チーム
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