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このページでは社会福祉法人の固定資産税についてお話します。

固定資産税とは

固定資産税とは、不動産(土地や家屋)、事業用の償却資産などに課される地方税の一つです。

課税対象は、居住用の住宅のほか、田んぼや畑、工場、店舗、倉庫、山林、牧場、飛行機、船舶、自動車・軽自動車以外の車両運搬具、PCなどの備品が入ります。

社会福祉法人と固定資産税

社会福祉法人は当該実施する事業によって固定資産税が非課税とされています。
(根拠条文:地方税法348条:固定資産税の非課税の範囲)

今回は保育園の中でも小規模保育事業について固定資産税が非課税か見ていきたいと思います。

【根拠条文】

地方税法第348条10の2
社会福祉法人その他政令で定める者が児童福祉法第6条の3第10項に規定する小規模保育事業の用に供する固定資産

当該根拠条文はとてもシンプルに、社会福祉法人が実施する小規模保育事業は、当該小規模保育事業の用に供する固定資産は非課税と定義されています。

では、次にここでいう小規模保育事業とはどのような事業かを見ていきます。

【小規模保育事業】とは

小規模保育事業の根拠法令は児童福祉法となります。
簡単に申し上げますと利用定員6人以上19人以下の3歳未満の乳幼児をを保育する事業となります。

根拠条文は次の通りです。

児童福祉法第六条の三 第十項
 この法律で、小規模保育事業とは、次に掲げる事業をいう。
 保育を必要とする乳児・幼児であって満三歳未満のものについて、当該保育を必要とする乳児・幼児を保育することを目的とする施設(利用定員が六人以上十九人以下であるものに限る。)において、保育を行う事業

そのため、社会福祉法人が行う小規模保育事業は固定資産税が非課税となります。
仮に小規模保育事業に係る土地や建物も購入した際にも固定資産税が非課税となります。

【余談】

余談になりますが、その他政令で定める者とあり、社会福祉法人以外でも小規模保育事業は固定資産税が非課税になる者があると読み取れます。

弊社では社会福祉法人以外でも保育事業も何件かお手伝いさせて頂いていますので、そちらも見ていきましょう。

【その他政令で定める者】とは

これは地方税法施行令第四十九条の十一の二に定められており、条文内容は以下の通りです。

法第三百四十八条第二項第十号の二に規定する政令で定める者は、社会福祉法人(日本赤十字社を含む。次条から第四十九条の十五までにおいて同じ。)以外の者で児童福祉法第三十四条の十五第二項の規定により同法第六条の三第十項に規定する小規模保育事業の認可を得たものとする。

うーーん、他の法律が混合していますので一つ一つ紐解いていきましょう。

【児童福祉法第三十四条の十五第二項の規定】

児童福祉法第三十四条の十五 市町村は、家庭的保育事業等を行うことができる。

 国、都道府県及び市町村以外の者は、厚生労働省令の定めるところにより、市町村長の認可を得て、家庭的保育事業等を行うことができる。 

ここでは市町村の許可を受ければ社会福祉法人以外でも家庭的保育事業等を行うことが出来るとあります。家庭的保育事業等の(等)には小規模保育事業も含まれます。

【児童福祉法第六条の三第十項】

 この法律で、小規模保育事業とは、次に掲げる事業をいう。

 保育を必要とする乳児・幼児であって満三歳未満のものについて、当該保育を必要とする乳児・幼児を保育することを目的とする施設(利用定員が六人以上十九人以下であるものに限る。)において、保育を行う事業

 この法律は先程も小規模保育事業の根拠条文で出てきました。

 この二つの条文を合算しますと、家庭的保育事業等の内、小規模保育事業を行う者が市町村長の許可を得て行う者と読み取れます。

そのため、社会福祉法人以外でも小規模保育事業を行うために市町村の許可を得ていれば固定資産税は非課税となります(株式会社等も非課税)。

(固定資産税の非課税の範囲)

第三百四十八条 市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。

 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。

十の三 社会福祉法人その他政令で定める者が児童福祉法第七条第一項に規定する児童福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの(次号に該当するものを除く。)

地方税法348条の第2項第10号3項

上記のように地方税法348条の第2項第10号3項に固定資産税の非課税範囲が定められています。
しかし、これだけでは一体何に対して非課税なのか分かりずらいと思います。これを読み解いていきたいと思います

  1. 社会福祉法人その他政令で定める者とは
     社会福祉法人はその名の通りであります。それでは政令で定める者とはどれに該当するかを見ていきます
    1. 地方税法施行令49条の12第1項に定められています。
       法第三百四十八条第二項第十号の三に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
       公益社団法人、公益財団法人、農業協同組合、農業協同組合連合会、消費生活協同組合、消費生活協同組合連合会及び医療法人
       学校法人
       前二号に掲げる者以外の者で児童福祉法第三十五条第四項の規定による認可を得たもの

       上記の地方税法施行令第49条の第1項1号及び2号に記載されている法人はその名の通りです。
       児童福祉法第35条第4項の規定による認可を得たものとは次に掲げる者をいいます

    2. 児童福祉法第35条第4項
       国は、政令の定めるところにより、児童福祉施設(助産施設、母子生活支援施設、保育所及び幼保連携型認定こども園を除く。)を設置するものとする。
       国、都道府県及び市町村以外の者は、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。

       ここでは、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置すれば良いとあるため法人自体は限定されておりません。
       さらに児童福祉施設とはどのような施設を言うのかは、地方税法348条の第2項第10号3の条文にあります児童福祉法第7条第1項に規定されています。

  2. 児童福祉法第7条第1項
     この法律で、児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センターとする。

  3. 固定資産で政令で定める者とは
    地方税法施行令49条の12第2項に定められています。
     法第三百四十八条第二項第十号の三に規定する政令で定める固定資産は、次に掲げる固定資産(こどもの国協会の解散及び事業の承継に関する法律(昭和五十五年法律第九十一号)第一条第三項に規定する指定法人が経営する児童福祉法第四十条に規定する児童厚生施設の用に供する固定資産にあつては、事務所その他の管理施設、宿舎及び駐車施設の用に供する固定資産を除く。)とする。

     一 社会福祉法人又は前項第一号に掲げる者が経営する児童福祉法第三十七条に規定する乳児院、同法第三十八条に規定する母子生活支援施設、同法第四十条に規定する児童厚生施設、同法第四十一条に規定する児童養護施設、同法第四十三条の二に規定する児童心理治療施設又は同法第四十四条に規定する児童自立支援施設の用に供する固定資産

     二 社会福祉法人又は前項第一号若しくは第二号に掲げる者が経営する児童福祉法第四十二条に規定する障害児入所施設又は同法第四十三条に規定する児童発達支援センターの用に供する固定資産

      社会福祉法人又は前項各号に掲げる者が経営する児童福祉法第三十六条に規定する助産施設で総務省令で定めるもの、同法第三十九条に規定する保育所又は同法第四十四条の二第一項に規定する児童家庭支援センターの用に供する固定資産


以上のことから社会福祉法人は児童福祉法第7条1項に規定されている児童福祉施設に係る固定資産税は非課税ということになります。
 

また、上記の条文は社会福祉法人以外の固定資産税の非課税についても規定されています。弊社ではこの条文を使って社会福祉法人以外の法人で固定資産税を非課税にした事例があります。ご興味がある方は弊社に問い合わせいただければと存じます。

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投稿者・投稿者チーム紹介

2部3課 社会福祉法人チーム
2部3課 社会福祉法人チーム
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