社会福祉法人は『社会福祉法』という法律に基づき設立された法人で、その目的は社会福祉事業を実施することにあります。
社会福祉事業とは社会福祉法第2条において第一種・第二種福祉事業として限定列挙された事業であり、例を挙げると特別養護老人ホーム、保育園、デイサービスセンターなどがありますが、主には公共性の強い、社会的弱者の生活を支えることを目的とした事業といえます。
そういった地域の福祉サービスにこたえるための事業であることから、営利を求める一般事業会社とは事業目的や会計目的に多くの違いが生まれることになります。
【一般事業会社】… 営利法人として株主や債権者の利益を追求し、会計開示は利益やその利益の源泉を開示することを目的。株主や債権者は開示資料をもとに投資を意思決定。
【社会福祉法人】… 非営利法人として社会福祉事業目的を達成し法人を継続させることで地域の福祉ニーズにこたえることが目的。会計開示は事業目的の財源及び使途の透明性を開示することを目的。株主も投資家も存在しない。
このような成り立ちの違いから社会福祉法人では補助金制度が多くある他、税金面でも優遇措置が図られています。
たとえば社会福祉事業を営む場合法人税も消費税も非課税ですし、固定資産税・都市計画税も社会福祉事業の用に供する固定資産には固定資産税等は課されません(地方税法348②、地方税法702の2②)。
一般事業会社ではよく出てくる印紙税についても継続的取引の基本となる契約書については不課税となっています。
では我々会計専門家として特に税理士は社会福祉法人にとってどのようなニーズがあるのでしょうか。
一般事業会社においては上述のように利害関係者への正しい会計開示を行うことで正しい納税額を算定することや、会計基準・税制を使った税務上のアドバイスが主な役割といえると思います。
しかし社会福祉法人においては上述のように各種納税義務がないことから税金計算にいくら詳しくともそのニーズはないように思われますが、そのようなことは決してありません。
社会福祉法第55条の2第5項には以下のように記載されています。
『社会福祉法人は、社会福祉充実計画の作成に当たっては、事業費及び社会福祉充実残額について、公認会計士、税理士その他財務に関する専門的な知識経験を有する者として厚生労働省令で定める者の意見を聴かなければならない』
細かい内容は省きますが、要は計算書類の作成、計算書類を作成するための日々の記帳から開示内容については会計の専門家の関与が必要になるということです。
社会福祉法人の計算書類は開示内容が多く、そして細かく法令で規定されています。
それらに対応するためには、社会福祉法人固有の会計処理を理解し、アドバイスできることが必要となります。
また、前述の社会福祉充実計画の作成・算定については法人の経営や運営の状況についてその内容を理解し、正しく計算書類に反映させることが必要となります。
我々税理士は、社会福祉法人の経営者とコミュニケーションをとることで法人の組織運営に関する情報を入手し概況を理解して計算書類に反映させています。
また経理担当者とのコミュニケーションをとることで記帳業務へのアドバイスや規定への準拠を確認しています。
このように法人と税理士が協力していくことで適正な計算書類の開示が達成されると言えます。
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